読書ログ「クライマーズ・ハイ(横山秀夫)」

航空事故がトラウマだ。

日航ジャンボ機墜落事故は物心がついていなかったので記憶にはないのだけれど、毎年のニュースやドキュメンタリーを観る度に、背筋が寒くなり悪夢にうなされる。二度と起こしてはいけない事故であると心に刻まれている。記憶に残っている事故は名古屋空港で起きた中華航空140便墜落事故でリアルタイムで乗客名簿が延々と読み上げられる放送を観て、幼心にも大変なことが起こった事と、それがとても恐い事はわかった。

横山秀夫氏は好きな作家のうちの一人で、最近作品の文庫化が進んでいるので読む機会が多い。そのどれもが「警察小説」だったので、本書を読み始めたときには何か違和感があった。違和感は正しい表現ではなく、「別格」だと言った方が正しい。それもそのはず、横山さんは新聞記者として題材となった日航ジャンボ機墜落事故に関わったからだ。

前述の理由で、航空事故をエンターテインメント化するのは好ましくないと思っているのだが、本書はミステリー的な要素もあり、親子愛などヒューマンドラマ的な面も描かれて、エンターテインメント小説として楽しむことが出来た。このジャンルで括っていいのかはわからない。簡単に言ってしまうと「面白かった」と言える。

ただ、「面白おかしい」と誤解してもらっては困る。決して面白おかしいわけではない。

本書は、横山氏が体験した経験を基に、「日航ジャンボ機墜落事故」を人々の記憶に留めて置く為の手段として書かれたのではないだろうか。そこであった出来事、感じた事、考えた事を風化させない為に、一人でも多くの人に知ってもらう為に。

だとしたら、もう自分は思惑通りだ。事故への思いは一層強くなったし、本書のことも一生忘れないだろう。一人でも多くの人に読んでもらいたい為に、こうやってブログにも書いている。

横山氏の作品の中で、映画にもなった「半落ち」よりもこの「クライマーズ・ハイ」が現時点での最高傑作なんではないかと思う。未読の方には是非読んで頂きたい。

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ドラマ化もされていたようだ。観てみたい。
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