あんまり覚えてないや
先日、家族で僕の実家に帰省した。1年に1回の帰省。前回帰ったのはいつだっけ?新幹線の乗車時間がどんどん短くなっても、帰省するのは1回。きっとどこでもドアが発明されようとも帰省回数は増えないかもしれないと思うと、なんだか申し訳なくなる。
飼い犬も随分と年をとったなあ。いかにも「老犬」だ。目が見えなくありつつあるのに僕が近寄ると吼えること吼えること。見えないからこそ吼えるのだろうか。
犬も年をとるように、両親も年をとる。って犬と比較したらダメか。父ももうすっかり「おじいちゃん」だ。見た目ではなく、孫がいるから。
じいちゃんになったお父さん
ばあちゃんになったお母さん
歩くスピードはトボトボと
散歩に出かけることにした。
父と二人で散歩なんてもう15年はしていないだろう。二人きりだったらなんだか気恥ずかしくて出来ないけれど、子どもも一緒ならすんなりと受け入れることが出来る。家の周りをぐるりと子どもと三人で散歩をする。
「このほそば*1の実は昔よく食べたな」
「え!?これって食べられるの?」
「甘いんだよ」
初めて聞いた。
28年生きてきたけれど、こうやって父と話をした覚えがない。そう言えば、父の子どもの頃の話も聞いた覚えがない。そう思うと、なんだか無駄に過ごした、というか、大切なことをまだしていない、話すべきことをまだ話していない、そんな気さえもしてくる。
だけど覚えているんだ 若かった日の二人を
あぁ きっと忘れないキャッチボールをしたり 海で泳いだり
アルバムにだって貼り付けてあるんだもの
ちゃんと覚えてるんだ ちゃんと覚えてるんだ
ちゃんと覚えてるんだ こんなに
歩いていると、自分が子どもの頃の記憶がふと蘇った。
ボールでガラスを割って怒られたこともあった。お手製のバスケットゴールを作ってくれたこともあった。草むしりもした(あまり手伝わなかったけど)。柿の実を採ったり、ブドウを採ったりもした。釣ってきた魚を外でさばいている父の姿も思い出した。釣りが好きなのに、あまり付き合ってあげられなかったな。ごめん。
僕は子どもに耳打ちして、子どもの口から言わせた。自分で言うのが恥ずかしかったから。
「あまりタバコを吸いすぎないようにね」
子どもへの副流煙が心配だからさ、と付け加えるように僕は言ったのだけれど、本当は父の体が急に心配になったからなんだ。
また近いうちに帰るよ。
あんまり覚えてないや/Mr.Children
アルバム「HOME」収録
*1:イヌマキ(http://ja.wikipedia.org/wiki/イヌマキ) 垣根として生えている。